その点、岸川先生は毎年何らかの形で講義を持っておられるが、学生には人気が高かった。


 それにボクたちのゼミの教官である高畑先生も、学生には受けがいい。


 皆が心から信頼するからこそ、岸川教授も高畑教授も悠洋大にい続けられるのだ。


 綾井など皆から評判が悪いので、今度学科で結束して、サボってもいいという話も仲間内から出ている。

 
 大学の教官も大変なのだ。


 昔は研究室で研究しながら、同時並行で講義を行い、そこそこのことを話していればそれで済んだのだが、今は業務の中に学生に対するサービスも半分含まれている。


 と言うか、名物教授というのが各大学に出来つつあるのだ。


「あそこの大学に行ったら、あの先生の講義が受講できるらしいよ」という前評判があって、それで大学という名のアカデミーは成り立っていた。


 そして時代遅れのような教官はスパスパ切られていく。


 昔のような大学ほど旧態依然(きゅうたいいぜん)としたものはなかったのだが、それも徐々に改革されてきつつあった。