ボクが彼女を大切に思っている何よりの証拠だ。


 愛海もあまり実家の話をしたがらない。


 彼女も実際は東北の実家に戻るつもりはないようで、大学を出たら即教員採用試験を受けて、国語の先生になるつもりのようだった。


 ボクは愛海が生徒に日本語の面白さを教え込むことに意義があると思っているのを知っていたし、彼女も高校で学生に勉強を教えながら、夜帰ったら昼間とはガラリと変わり、作家になるつもりでいるのを知っている。


 愛海は今無性に新人賞が欲しいらしかった。


 だが、情勢はそんなに甘くもないようだ。


 彼女の書く文章には確かに品格があっていいし、ボクはもし愛海が無事職業作家になれば、彼女の書いた本を真っ先に買う気でいる。


 それだけボクも愛海を応援したかったのだ。


 まずは超が付くぐらい難関の新人賞を、ということらしい。


 それは作家を目指している人間なら、誰もが望むコースだった。


 稀に出版社に持ち込んだ原稿が出版社の人間の目に留まり、それで出版化ということも