“いい匂いだな”


 素直にそう思えてしまうぐらい、ボクは彼女を愛していたのだ。


 その気持ちにウソ偽りはない。


 そして愛海がボクの心を見透かしたかのように呟いた。


「……祐太も男のにおいがしてる」


 ボクは幾分照れながら、


「お互い様じゃん」


 と言って、笑顔を溢し合う。


 ボクたち二人は夏の日に密室で抱き合いながら、ボクは今夜のバイトのことを考え、愛海の方は執筆する作品のことを考え続けているようだ。


 互いに気持ちは落ち着いていても、実際やることはあるのだし、十分忙しいのだった。


 そしてボクたちは充実した学生生活を送り続ける。


 お互いすべきことをしながら……。