「ええ。多分、出版社側が受賞作の書籍化と書店流通まで考えてくれてると思う」


「いいね。……賞金とかもあるんでしょ?」


「うん。大賞受賞者が百万円で、優秀賞受賞者が半分の五十万円」


「結構な額だね」


「でも、このぐらいの賞金なんて、賞を獲った後で来る仕事に比べればわずかなものよ」


「確かにそうかも。大手の出版社が主催する賞って、プロになるための洗礼みたいなもんだからな」


「そうね。職業作家になれば、ちゃんとした仕事が来て、それで生計が立つようになってるんだから」


「難しい世界だけどね。文芸って」


 ボクがそう言って、思わず吐息を漏らす。


 愛海も軽く息をつき、その後、


「でも、文芸ってとっても奥深いわ。今日の岸川先生の話でもあったじゃない。一筋縄じゃいかないって」