そしてボク自身、大学の教授なんて砂利(じゃり)しかいないという一方的な考え方を変えざるを得なかった。


 それだけ岸川先生は例外中の例外で、人間的にも素晴らしい。


 いわゆる学生と目線が同じ、庶民派というやつである。


 人間として十分尊敬できた。


 ボクも愛海も講義を受けながら思っている。


「この時間は充実してるな」と。


 特に作家という特殊な職業を目指す愛海は、岸川教授の話が何より好きなようだった。


 それにボクも岸川先生に惚れ込んでいるところがある。


 普段、別の教授が行う講義などどうでもいいのに、岸川先生の講義だけはしっかりと耳を傾けていた。


 実は岸川先生も大学在学中に小説家を目指していて、たくさんの新人賞に公募したが、落選続きだったのだ。


 今と違って、パソコンやネットがない時代である。