ボクと愛海は同じ二十一歳だった。


 今住んでいるのは、日本の西側にあるR県の地方都市で、市内にボクたちの通う、悠洋大学のキャンパスがある。


 ボクも彼女も悠洋大の文学部の二年生で、四月から学年が一つ上がり、三年生になるのだった。


 互いに古典文学を専攻している。


 ボクは専門が夏目漱石で、愛海は三島由紀夫だ。


 ボク自身、好んで漱石の小説を読んでいて、彼女も相当熱烈な三島ファンなのだった。


 ボクは昔から読書が好きで、高校二年の夏休みに漱石の全集を図書館で借りてきて、片っ端から読んでしまっていた。


 ボクの文学好きは日に日に高まり、北海道の実家にいる親から相当反対されたのだが、あえてその反対を押し切って、R県まで出てきたのだ。


 愛海も実は東北地方出身で、地元の国立大学に落ちてから、悠洋大に来たのだった。


 ボクたち二人は大学に入ってすぐ開かれた新歓コンパで偶然知り合い、意気投合した。


 ボクは愛海が高校時代から文学少女で来ていて、将来密かに作家を目指していることを