「海？」


「うん。……嫌？」


「そうじゃないけど、君運転大丈夫なの？」


「ええ。普通に行けるわ。一応免許持ってるから」


　愛海は大学入学直後、すぐに普通車の運転免許を取り、実家の両親から車を買ってもらって、何かあるたびに車を使って遠出するようになっていた。


　彼女は自分に言わせれば運転が上手いらしい。


　どこへでもと言うわけじゃないが、街のすぐ北側には広大な海があって、愛海はそこまでの運転なら出来るようだった。


　そしてボクは妙に潮の匂いが嗅ぎたくなる。


　二人でいれば楽しいのだった。


　ただ、寄り添っているだけで……。


　ボクたち二人はその日、愛海の誘い通り海まで行き、互いの髪の香りが同じになる頃まで一緒にいた。