ずっと抱いてて

 夜間午後十時と日付が変わって午前二時の、合計二回の点検を挟みながら……。


 そして夜が明けると、窓から暖かい春の風が入ってきて、ボクは思わず大きく背伸びをし、ロッカールームに行って着替えを済ませた。


 ボクは別に警備保障会社じゃなくても、他にいろんなことが出来るのだ。


 例えば引っ越し屋など、怖い上司がいておよそ普通の青年が嫌がるような仕事でも、ボクはしたことがあった。


 ボク自身、悠洋大に入ってすぐの夏に引っ越し屋のバイトに行ったことがある。


 そのときは現場がとても蒸し暑くて、ボクも貸与された制服を着てから、淡々と荷物の搬送などをこなした。


 引っ越し屋のバイトは皆が一様に嫌がる。


 特に怒りっぽい上司がいるのが普通なので、まだ十八歳とか十九歳とか、そのぐらいの年齢じゃとても務まらない。


 大抵、主任にはちょっとヤーさんっぽい人が一人か二人いて、ボクや他の学生アルバイターに怒鳴りつけていた。


 およそ尋常な神経じゃやれないのが、この世界なのである。