「葵ちゃん、遠くからわざわざありがとう」
昨日から寝ずの看病をしていた両親に代わり起きてきたおばあちゃん。
ここは伯父さんの元勤めていた病院でもある。
「具合……どう?」
朝からこの病院の事務服で顔を覗かせるのはいとこの舞ちゃんで……嫌が応にもまた自分の育ちを感じる瞬間。
お医者様の伯父さんに有名女子大卒業のいとこ。
羨ましいなんて全然思わないんだけど……ただ、やっぱり自分みたいな子はいない。
それだけ。
彼女は来月結婚式を控えていた。
唯一の女の子のいとこ。
おめでとう……なんて言える状況じゃないけど嬉しいから……
親戚のいない所でこっそり『おめでとう』を言った。
彼女は幸せそうににっこりと笑った。
幸いにもおじいちゃんの状態は安定して……みんな安心していたんだ。


