将来の夢を持った事もあった。
私はミュージカルがやりたかった。
おじいちゃんは演劇関係に知り合いが多い人でよく一緒に見に行っていた。
舞台の女優さんはイキイキしていて、私もそうなりたいって思ったんだ。
あれは、人魚姫を観た帰りの事。
「おじいちゃん!!葵もミュージカルやりたいよ!!」
「じゃあ知り合いの児童劇団紹介してもらうか」
そんな風に、浮かれて帰った私達を待っていたのは怒ったお母さんだった。
演劇なんてとんでもない!!
お父さんは高校を卒業してもやりたかったら好きにしたらいい、そう言った。
そんな先の事言われても分かるわけない。
でも、怒られてしまったおじいちゃんがかわいそうで私は心に封をした。
そんな、勉強ばかりでちょっと変わった私は周りからもイジメの的。
だれも話してくれない。
だれも遊んでくれない。
私に触ると菌が付くんだってさ。
だから、学校が終わったら黙って家に帰るしかない。
活字の本しか認められていない世界で、勉強よりはましだとひたすら本を読んでいた記憶がある。
せめてもの抵抗。
全寮制の学校で夜、秘密のパーティーをする。
そんな話で小さな心は高揚した。
好きなものを好きだって素直に言える、認められる……自由が欲しかった。


