男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~




教育熱心な親は私を早く一人前にしたかったのだろうか?


昔から、あまり親に甘えた記憶がない。


一人で何でも出来ると褒められたから、なんでもやった。


心配もされなかった。


「葵さんはしっかりしてるから大丈夫でしょ?」


これがお母さんの口ぐせ。私はずっと実の親に葵さんと呼ばれている。


遠くのおばあちゃんの家だって一人で電車を乗り継いで行く。


周りの子はまだこんな事しないのに……おばあちゃんだけは心配して家のそばまで帰りについて来てくれた。


学校でテストがあれば80点以上取る事は義務だった。


お利口な両親。


専業主婦のお母さんはお手製の漢字ドリルや計算ドリルを作って出来るまで解かせた。


そう、出来る人間には分からないのだ。何故、理解出来ないかなんてわからない。


気付けば小学校中学年の頃には弟に学んでいる教科書を抜かれていた。


天才脳の弟と、平凡脳の私。


それでも、2年の差を埋められて、プライドが傷つかないなんて言ったら嘘になる。


とにかく愛されるには勉強しかなかった。


マンガも読ませてもらえない。ドラマももちろん禁止。


少しのアニメとニュースだけが許されていた。


ある年、弟と一緒にお年玉を出し合ってファミコンを買った。


もちろん両親は買ってくれないから。


それですら週に3回、一度につき30分まで……そんな風に厳しく制限された。


塾なんて、家庭教師なんて、通信教育なんて必要ない。


だって親が全てこなしてる。


お手製のドリルは巻末の答えなんて当然ない。


毎日、全てを覚えるまで解き続けるしかないのだ。