それから20分後。
頑張り抜いたリュウジが帰ってきた。
すごくすごく疲れた顔をして……だけど本当に嬉しそうで。
「いたんだね。ずっと待っててくれたんだね」
私がそう言うと、そっと笑った。
局部麻酔で手術を受けていたリュウジの意識は術中もはっきりしていて……。
だから彼もまた泣いていた。
顕微鏡を覗いていた先生の
「精子いました!!」
そんな興奮した声に……私と同じように感情が胸に来る前に自然に涙が流れていたんだと。
それは、今までに経験した事のない不思議な涙。
私達が共有した気持ち。
私は、今日の事を一生忘れないと思う。


