「じゃあ幼い頃に命に関わる病気をして……それで抗がん剤、と」
「はい。あ……これ前に地元で検査したときの結果です」
精子数0匹の検査結果に先生は軽く目を通すと、なるほどと頷いた。
「おそらく……抗がん剤が原因でしょう」
「がん細胞を薬で叩くと言う事は、正常な精子を作る細胞も一緒に叩かれる訳ですので……」
そうだろう、とは思っていたけど。
現実に言葉で告げられると、改めてそれは重く心にのしかかる。
「前の検査からだいぶ経っていますのでもう一度精液の検査とホルモンの検査、あとエコーをやってみましょう」
ひょっとしたら見つかるかも知れない。
微かな願いと共に、リュウジは処置室へと消えていった。


