優しくて。
ビートルズ初来日の時、お迎えに行ったのが自慢で。
毛沢東さんと撮ったツーショットの写真が自慢で。
初孫の私を誰より可愛がってくれて。
勉強よりも好きな事をやったらいいと唯一言ってくれた人。
その小さな体はたくさんの管に繋がれ、痛々しい状態で眠っている。
「部屋が空いてなくてね……」
凄く悪いからこの24時間病棟にいるんじゃないのよ、とその言葉に少しだけ落ち着く。
朝になりナースさん達がたくさんやって来た。
「矢口さん。具合はどう?起きないかんよ!」
久々の名古屋弁をいつの間にかキツク感じて……また距離を実感する。
今では、この街で恋に落ち、失い、更に堕ちた日々なんて嘘みたいだよ。


