「あ……」 ボールが。 こっちへ転がってくる。 見つかっちゃう。 私はとっさに目を閉じた。 ザザザザ……と彼の走る音が聞こえた。 近づいてきた。 はぁはぁという息遣いが聞こえた。 「悪い……」 彼の声。 きっとすぐ近くにいる。 私はゆっくりと目を開けた。 フェンス越し。 1メートルの距離にいた。 その男の子は、照れくさそうに髪をかきあげた。