僕にキが訪れる

ふと隣の委員長が、僕の視線を追った後で「いいなぁ、ああいうの」と呟いた。

ぼんやりと見つめていた先にいたのは、とても人のよさそうな老夫婦だった。

ベンチに腰がけ、子ども達のはしゃぐ姿を見守るように微笑んでいる。


「いいって、何が?」


「ん~……いつまでも仲良く2人でいられてさ。私もあんな風な夫婦になりたいな」


「あれを目指すのはちょっとまだ気が早いんじゃないかな……」


「そーかな? まぁでも、憧れるのよ、うん」


ふーんと相槌を打ちつつ、改めて僕はその老夫婦を見やる。

年寄りになりたい若者ってのも、珍しいな。

僕にはちょっと、わからない感情かもしれない。