僕にキが訪れる

「関節の調子はどうかな」


「一応朝晩に屈伸運動をしていますが、それでもちょっと動かしにくい、ですね」


僕が何かしらの情報を伝えるたび、彼はいちいち複雑そうな表情を浮かべる。

医者が不安がっては患者にもそれが伝わるだろうに。

人間味はあるが、しかしあまり優秀とは言えないんじゃないだろうか。

まぁ、それでも患者には慕われるのだろうな。

感情を素直に表現できる人間は、慕われるものだ。

きっと彼女も、この医者側の人間なんだろうな。

ぼんやり考えている間にも質疑は続いた。

僕は淡々と答え続け、彼もそれを静かにメモし続けた。