「あの」


靴を履いて出て行こうとする委員長に、僕は声をかけ立ち止まらせた。

傘立てに刺さっていた自分の傘を抜き取る。

もうこれも、自分が使うことはないだろう。


「返さなくていいから」


差し出した傘に、しかし委員長は、


「ちゃんと返しに来るよ」


首を横に振った。


そのまま「それじゃあね」と、幾分か元気を取り戻したような声を上げ出て行った。

また来るのかと少々うんざりしつつ、そう言えば誰かと言葉を交わしたのは何日ぶりだろうかと、自分の引きこもりっぷりを再確認した。