その木には、女の子の頭の高さくらいの位置に、明らかに不自然な、横に飛び出た2本の枝があった。

それが、まるで何かを囲おうとしているかのように、わっかを作っている。

また、根元にも、2本だけ、やけに横に伸びた根があった。

見ようによっては、それは足に見えなくもない。


「うん? これ? これはねぇ……」


ふと、懐かしむような目で、母親が口を開く。


「昔、人間だったのよ。私達とおんなじの」


「えぇ? うそだー」


女の子は信じない。

そんな御伽噺みたいなこと、あるわけない。

この木が昔は人間だったなんて、到底信じられない。

けれど母親は、優しく諭すような声で、女の子に話す。