僕にキが訪れる

「誰かを、裏切るんじゃないかと……怖くて、怖くて。
本当のことを言って、親しくなって。
そんな人を、いつか、傷つけてしまうんじゃ、ないかって。
それが、怖かった。
また、失うんじゃないかって、俺の……僕の、せいで。
けれど、遠ざけることさえ、嫌で。
本当は、ずっと、ずっと、誰かにいてほしかった……けれど、自分にはそんなもの許されないんだって、中途半端なまま、そうやってきて……何てワガママなんだって、思うけど、でも……」


何て情けない姿だろう。

子どものようにぼろぼろと泣きじゃくって、弱い自分を吐き出して。

けど、安堵していた。

ずっと、誰かに言いたかった。

聞いて欲しかった。

寂しいんだって。

近くにいてくれないかって。

それは、隠しても隠し切れない、確かな本音。

そして、彼女は、それに応えてくれた。

優しく涙を拭ってくれて、笑った。