僕にキが訪れる

「でも、時々笑う時があった。
それは、クラスで見かけるような、作り物の笑顔じゃなくて。
ちゃんとした笑いで。
嬉しかったよ、あぁ、笑ってくれてる、って。
ホントにちょっとしたことだけど、でも、この人の本音の部分だ、って。
すごい、嬉しかった。
それで、もっと知りたいって思った。
本当はどんな表情を持っているのか、教えて欲しかった。
……カウンセリングとか、全部嘘。
理由が欲しかっただけ。
近付きたかっただけ。
いつか、その人のいろんな話を聞けるって、期待して。
でも、その人は、ホントは凄い秘密抱えてて。
1人で抱えるには、辛いはずのものを背負ってて。
……話してもらえなかったことが、ちょっと、悔しいって思った。
そして、この人の辛さとか知らないでいた自分が、嫌だった」


そういう風に取られるとは、思っていなかった。

騙していた酷いヤツ。

感染すれば確実に死に至る病を身に宿しながら、それを黙っていた、最悪な人間。

きっと、そう思っていると思っていた。

けど、それは違って。