僕にキが訪れる

その疑問に答えるように、彼女は静かに語り出した。


「私ね、よく、クラスのこと見てるから。人間観察が趣味、っていうと何か聞こえ悪いけどさ。周りを見るの、好きなの。
そして、その中で、1つ、ずっと気にかかっていた人がいたの。
その人は、いつも笑っていたわ。
けど、笑っていなかった。
本当は、ただ周りに調子を合わせていただけ。
最初は気付かなかったけど、誰も見ていないところで、いつもだるそうな、寂しそうな顔をしてたから。
それで、気付いたの。
あぁ、きっとこの人は、本当のことは全部隠してるんだ、って」


前に、彼女からクラスの報告とかを聞いた時にも驚いたが、今度はそれ以上に驚いた。

他の誰でもない。

僕のことだ。

そんなところまで、見ていたなんて。