僕にキが訪れる

「それじゃ、いただきます」


箸を手に取り、から揚げを1つ口に運ぶ。


「どう? どう?」


やけに熱心に評価を尋ねてくる彼女に、僕は口を押さえて「ちょっと待て」とジェスチャーで伝える。

口の中に物を詰めたまま喋れないというのに、せっかちな人だ。

あえて僕はゆっくりと咀嚼。

10秒程してからようやく飲み込み、


「美味しいよ」


シンプルな感想を述べた。