「どうかされましたか?琴弥様」 突然固まり出したあたしの異変に気付いたらしい笹山さんが、大きな駐車場をゆっくり走らせながら聞いてくる。 「な…なんでもないです!」 「そうですか」 あたしは笹山さんに向いていた身体の向きを直すと、口元に手を当てて黙り込んだ。 さっき見た光景。 笹山さんを見て驚いた訳ではない。 さっきの妊婦さんと知り合いな訳でもない。 あたしが見たのは… 見知らぬ女性とマタニティショップから出て来た、岬サマだった。 .