三十歳なんて、かなり驚きだ。


外見は普通に二十歳でも通用しそうなのに。



だからか。

笹山さんが時々見せる行動や考えが大人っぽく感じたのは。




あたしが一人納得していると、ふと隣から笹山さんの「あれは…?」という呟き声が耳に入ってきた。


あたしは、やっと冷めてきた顔を上げた。




笹山さんの視線の先には、お腹が丸い妊婦であろう女性が、マタニティショップから出て来ていた。


…岬サマじゃない。



期待をあっさり裏切られたあたしは、また下を向こうとした。



だけど、あたしは聞いてしまった。



「まさか、岬様は…」という、何かがありそうな笹山さんの険しい声を。




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