大急ぎで校門まで向かうと、黒いリムジンの中からスーツ姿の笹山さんが運転席から出てきた。
「ご…ごめんなさい!遅れちゃいました…」
「いいんですよ」
いつもの微笑みを浮かべながら、笹山さんはあたしを助手席に乗せてくれる。
そんな笹山さんの紳士ぶりに、周りの生徒達は興奮気味だ。
「高校生って若くていいですね。
では出発しますよ?」
笹山さんはアクセルを踏んでリムジンを発進させた。
あたしはだんだん遠くなっていく学校を眺めながら、ただリムジンのエンジン音を聞いていた。
笹山さんが運転するリムジンが、マンションとは反対方向に向かっていると気が付いたのは、それから少し経った後だった。
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