あたしはそっと茜の方を見る。
茜は凄く真剣な表情をしていた。
「あのさ、琴弥。
もう笹山さん迎えに来てるよ?」
「へ…?」
あたしは恐る恐る教室の窓から校門の方を覗き込んだ。
そこには、今となっては見慣れた黒いリムジンが一台停まっている。
その光景を見た瞬間、あたしの頭から血の気が引いていくのを感じた。
「わ…忘れてた!
じゃあね!あたし帰らないと」
「ばいばーい、琴弥!」
ニコニコ笑顔で手を振る茜をよそに、あたしは校門まで急いだ。
笹山さん、ごめんなさいっ!
すっかり存在忘れてました…。
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