「あたし何回も名前呼んだのに、返事すらしないってどういう事かな?琴弥チャン?」
目の前で妖しく笑う茜に、あたしはただ「ごめんなさい!」と謝る事しか出来なかった。
時間は過ぎて、あっという間に放課後となっていた。
今朝起こった信じがたい出来事を、あたしの頭の中で再生する。
一時間目のチャイムが保健室に鳴り響くと、岬サマは栗色の髪の毛を揺らしながらあたしの上から降りた。
その表情は冷え切っていたけど、少しだけ照れているようにも見えた。
「…な、何すんのっ!!」
「言っただろうが。
俺以外のヤツをお前の心に入れたら、許さねーから」
脱いだスリッパを履きながら、ぶっきら棒に口を開く岬サマ。
あたしは真っ赤な顔を隠しながら岬サマを盗み見ていた。
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