あたしは笹山さんから目線を外して答えた。




「それがですね、実は…

岬サマ、実家の方へ戻っちゃいまして…」



「それは、岬様がここを抜け出したという事ですか?」



「はい…」




気まずそうに答えたあたしを見て、笹山さんは何かを考え込むようなポーズをする。




「誠に申し訳ございませんでした、琴弥様。

実は私、昨日は仕事でお屋敷の方へ戻っていなかったもので」



「いえ、笹山さんが謝る事じゃないですよ!

あたしが岬サマに失礼な態度をとってしまったみたいで」




あたしは笹山さんを心配させないように、作り笑いを浮かべて否定した。




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