その夜。

俺は怖い夢を見て、ただただ泣いていた。



親父は、俺が小さい時から忙しかったらしく、いつも家を空ける事が多くて。


そのせいもあって、俺は常に母さんと同じベッドで寝ていた。



母さんは、俺が泣き始めるといつも背中を擦ってくれた。


そして…




「大丈夫よ、岬」




そう優しく囁いてくれていた。



当然、今回も母さんが俺をなだめてくれると思っていた。


信じていた。




…だけど。


俺の背中に温もりが来る事は、二度となかった。




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