「よろしくお願いします、笹山さん…」
何もしない岬サマの代わりにあたしが頭を下げる。
笹山さんは岬サマをチラッと見ると、「それではまた明日の朝伺います」と言い残して、この部屋から去って行った。
…二人だけの気まずい空間。
あたしがこの雰囲気を正そうと、必死に話題を見つけていた。
「お前…確か琴弥って言うんだよな?」
「え?う…うん!」
岬サマの口からあたしの名前が刻まれる。
その事が嬉しくて、あたしが笑顔になりかけた時だった。
「俺はお前と同居なんて認めねーからな。
ここには住んでいい、だけど俺は実家に戻る。
明日から一切俺に関わるな」
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