「帰るぞ、琴弥」
岬サマはあたしの手を乱暴に掴むと、ダイ君からあたしを引き離して歩き出す。
チラッとダイ君を見ると、
「ほな、また明日な琴弥ちゃん」
ダイ君は笑顔のままあたしに手を振り続けていた。
気まずくて手を振る事が出来なかった変わりに、あたしは軽くお辞儀をした。
そんなあたしを気に入らないように睨む岬サマは、いつもに増して怖かった。
「岬サマ…」
「黙れ」
「ねぇっ…!」
「黙れっつってんだろ!」
速歩きだった岬サマの足が急に止まり、視線があたしに注がれた。
…今の岬サマは、食に飢えた狼のように見えた。
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