あたしが今居る場所は、見知らぬマンションのエントランス前。 あたしの家でもないし、親戚や知り合いが住んでいるような場所でもなかった。 自分とまったく関係なく見慣れない光景に愕然とする。 突っ立ったままのあたしを見兼ねて、運転手が声を掛けてくれた。 「琴弥様。 さあ中へお入り下さい」 「なっ中…!?」 拒否反応を起こすあたしの腕を運転手はグイグイと引っ張って行き、あっという間にエレベーターの中へと乗り込んでしまった。 運転手は何の躊躇いもなく、「三十」のボタンを押した。 .