そして、あたしの中であるひとつの考えが浮かぶ。
もしかして、岬サマのあんな姿をあたしに見せない為に、笹山さんは帰ろうなんて言い出したの?
あたしを傷付けない為に、あんなに笑顔だったの?
結び付いてしまった全ての出来事に、あたしはシートベルトを痛い程握りしめる。
岬サマには彼女がいる。
岬サマには子供がいる。
岬サマは…パパなんだ。
「―――ッ…」
思いもよらぬ事実に、あたしは笹山さんに聞こえないくらいの声の小ささで泣き始めた。
やっと気付けた小さな恋心は、
あたしにとって、辛い辛い物語の始まりでした―――
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