「面白い話?」
和之は、頭から手を離して眉をひそめる。
「うん、面白い話」
眉間に寄っているシワを人差し指の腹でグリグリと押した。
「莱が思い出す保証なんてねぇし……考えても仕方なくね?」
自分でも分かるくらい唇を横に広げて歯をだすと、険しい表情だった和之の表情が少しずつ柔らかくなっていった。
「希莉ってのんきすぎ。
でも、そうだよな。記憶は思い出してから考えればいいよな」
――本当は“考えても仕方ない”とか思ってない。
だけど、和之が考え込むことじゃないから。
「面白い話か~。……あっ。面白いって言うかひどい話なんだけど……」
ここから、どうでもいい会話が始まった。


