「いや、思い出してねぇよ」


「……そっか」


和之と矢沢は、親友っていえるくらいスゴく仲がよかった。


和之の彼女の亜沙美ちゃんは莱と仲いいから、矢沢、莱、和之、亜沙美ちゃん、の4人でよく遊びに行っていたとか。


「莱ちゃん、本当に優羽がいないとダメって感じだった。
優羽の葬式の時ボロボロ涙流していたし……」


「……うん」


「記憶がなくなるまでは、寂しさを紛らわすために色んな男に抱かれてたみたい」


「……うん」


前かがみのままなんだけど、和之の視線は、ぼくじゃなくて、テーブルに置かれてる、伝票を入れるための透明なプラスチックの筒。


プラスチックの筒を見つめる和之の瞳は、とても寂しそうだ。