桜の並木道で莱と別れた後、歩いて10分のところにあるファミレスにきた。


莱と一緒にいない時はよくここに来る。


「おぉ~!もう来てたんだ?早いね」


今デカい声で話している友達の“和之”と、ココで話すのがぼくの不安を除く方法。


完璧に除けるわけじゃないんだけど。


和之は「ふう」とため息を漏らして、ドカッとぼくの前に座った。


テーブルが一瞬だけ揺れる。


別に和之はデブじゃねぇよ?


少し体がぶつかっただけ。


テーブルの上に両腕を置き、前かがみでぼくの顔を覗き込んでくる和之。


「莱ちゃん、どう?思い出した?」


和之が言った“思い出した?”は、莱の中の矢沢の記憶を指している。