莱は、ぼくと繋がってない方の手で慌ててケータイを取り出し、ディスプレイに表示されてる時間を見る。


「あぁ!やばいよ!……希莉ごめん、どうしても行かなきゃいけないの」


莱の手はぼくの手から離れ、彼女は両手を合わせて何度も「ごめん」と謝る。


そんなに謝らなくていいのに。


「行ってこいよ」


ぼくは固くなった頬の筋肉を無理やり使って、口角を上げた。




「本当にごめんね?じゃあ、また明日」


莱は、手を振りながらそう言って、待ち合わせ場所に向かった。