いつか莱は矢沢のことを思い出すのかもしれない。
彼女の中で消えてはいない矢沢の存在。
もし、莱が矢沢を思い出してしまったら
――ぼくは捨てられる。
「希莉どうしたの?気分でも悪いの?」
莱は心配そうな表情(かお)をして、手の甲でボクの頬をさする。
「大丈夫だよ、かなり元気」
ウソ、かなり不安。
「そう?ならいいんだけど」
いつか莱が離れていくんじゃないかって考えると、怖くて苦しくて……ビクビクしている。
不安を抱えたまま、しばらく桜の並木道を歩いていると、莱が何かを思い出したように目を見開いた。
「亜沙美と約束してたの忘れてた!」


