莱の彼氏になったのは2年前。
……ぼくは嘘をついている。
莱はすごく大切な人の記憶を失っている。
つき合っていた彼氏の記憶。
彼氏は2年前、事故で亡くなった。
ぼくも彼と同じクラスだったから、どんな男かは知っている。
名字は矢沢で、確か、優羽って名前だったはず。
事故のことを強くショックを受けたからかは分からないけれど、彼女の中から消えてしまった矢沢の記憶。
――チャンスだと思った。
彼女にずっと片思いをしていたから。
“ねぇ、ぼくが彼氏だったの忘れたのか?”
彼女の中から消えた大切なキオクを――利用した。


