【奏】スキとウソのキオク



本当は、今すぐ莱を抱きしめて離したくない。


“一緒にいてくれ”って叫びたい。


でも、矢沢を想う莱と一緒にいることは難しいと思う。


ぼくは矢沢じゃねぇから。


――悪者は、退散しよう。


「ばいばい」


本当に大好きだったんだ。








莱の家を出て、5分くらい歩くと自分んちが見える。


……!


――和之?


和之がぼくの家の前で、そわそわしながら辺りを見渡している。


「和之、どうしたんだ?」


口を広げて大きい声で言うと、和之はぼくに気づいたみたいで走ってきた。


「おっ!希莉~!莱ちゃんから何もらったんだ?亜沙美と莱ちゃん、俺達にプレゼントを買いに行ってたんだろ?」


肩をバシバシと叩かれる。


いてぇし。