【奏】スキとウソのキオク



ページを半分くらいめくったところで

ポタッと日記帳に莱の涙が落ちた。


「……優羽」


それから何回も矢沢の名前を日記帳に向かってつぶやき、溢れる涙を服の袖で拭う。


「あたしが大好きだった人……っ」


起こって欲しくなかったことが、目の前で起きている。


思い出して欲しくなかったのに――。



やっぱり、矢沢は莱の中から消えてなかったんだ。


莱が持っている水玉が描かれた日記帳も、緑色の石がついたピアスも、2人を繋ぐもので。


ぼくが入る隙間なんてなかったんだ。



「ごめん、ぼく、うそつきなんだ」


「希莉……」


「莱の本当の彼氏はぼくじゃなかったんだ。2年間も騙してごめんね……」