木々から溢れる眩い光に誘われて
見上げれば一面に桜色の空
散りゆく花びらが
頬をそっと優しく撫でた。
家の近くには桜の並木道がある。
春になると木はもちろん、地面もたくさんの桜の花びらで埋め尽くされてピンク色。
今、ぼくと彼女の莱(らい)は桜の並木道で手を繋ぎ、ヒラヒラと舞う花びらを目で追いかけている。
タレ目の彼女は、いつも以上に目尻をたらして微笑み、ぼくはそんな莱を見て頬を緩める。
「希莉(きり)、桜がキレイだね~。ふふっ。もうつき合って3年になるんだよね」
……。
莱の言葉に罪悪感を感じながら、彼女の手を強く握りしめた。
本当は……
本当は3年もつき合ってなんかいない。