私は、当たり障りのない話を、精一杯背伸びした会話で繋いだ。


何故だかアナタは、私がいつもの時間を過ごして帰ってくると、

必ず、この寂れた駅の前にもたれ掛かって、私を待っててくれてた。



ヒラヒラと手を振るアナタを見ると、私のありきたりな時間は、一気に加速度を上げる。

私だけを見つめるその微笑みに、目の前の世界は一変する。



アナタが、私と居ない間に何をしていて、一体どこから来て、いつからここで私を待っているのか……


何も知らない。

何も聞かない。



始まりも終わりも、私たちにはこの駅だけだから。



そして、幾日経とうとも、アナタの放つ空気がこの町に染まることはなかった。

いつだって、アナタはこの町の土の上に、ただ居るというだけだった。


……決して混ざり合うことなく。



そう感じていたのは、私だからなのか……

アナタを特別だと思う、私だからだったのかもしれない。



アナタの唇が呼ぶことで“特別”になる私の名前も、


優しく囁きながら撫でてくれる、少しクセのかかった私の真っ黒な髪も、


アナタが最高のところだと褒めてくれた、この何もないシケた町も……



少しだけ、スキになれた。



だって、アナタが

そう言ってくれたから――