何にも知らない、ただの田舎者。
アナタはきっと、心の中でそう笑ったのだろう。
でも、私がほんの一瞬だけのリアルなスリルを求めていることを……
“本気の恋”ってヤツがしたいわけじゃないってことを……
アナタはちゃんと、わかってくれてた。
お互いに、気まぐれに沸いた、自分とは違う珍しい人種への、一時の興味。
絡み合う視線で、暗黙の了解を交わす。
不似合いで、不揃いな私たちは、歩き出す。
二人で歩くにはギリギリの、窮屈な田んぼ道を。
足下から飛び出しては、あっという間に消えていく、名前もあやふやな虫たちに、
アナタは、驚いては楽しそうに笑っていた。
アナタは、その虫たちを踏まないようにと慎重に歩く。
そんなもの、存在する意味すら持たないような……
どれだけでも、どこからか無限に沸いて出てくるような、取るに足りないものたちなのに……
ちゃんと優しさは持ってるんだ。
人さえも押しのけて、踏み潰していっていまいそうだという、
冷酷な都会人への根拠のない偏見が、私の中でひとつ払拭された。

