――そんなある日だった。



どうでもいいはずのこの列車が、精一杯の力を振り絞って

最期の奇跡をこの町へ……


私の元へと、運んできてくれたのは――



見慣れないオーラをまとうアナタは、明らかに周りの景色とは不似合いで、ごく自然に私は惹かれた。


その異様とも言える感覚に“あか抜ける”ってこういうことを言うのだと、初めて知った。



そして、当然のように、私の足は時を止める。


アナタの瞳に、私が映されることはないとわかっているからこそ、真っ直ぐに見つめる。


だってアナタは、下を向いて歩いていたのだから。



この町では、遥か先を見据えながら、前を向いて歩くことも、

未来を想像して、上を見上げて歩くこともできない。


この町の道は、足下を気にして歩かないと、小さな石につまづいてしまうし、

空は眩しすぎて、とてもじゃないけれど、どうしても目を伏せずにはいられない。



だから私の目の前に続く道は、いつだって曇っている。


この町では、夢が見れない。



自由に見えて、不自由な環境。



狭くて、安全な町――