喫茶店へ行くといっても、高校生のお小遣いなんてたかが知れている。 マスターはそんな私の懐事情をおもんばかって、いつも 「余りものだから」 とカフェオレをいれてくれた。 「高校生が遠慮なんかするもんじゃないよ」 そう言いながら、決まって忙(セワ)しなくカウンターを拭く。 月が耳元で「照れてるんだよ」と教えてくれる、そんな時間を日々過ごしていた。