その日から、私は月のバイトしている喫茶店『セレネ』へ行くことが増えた。 あしげく通っているうちに、マスターとも仲良くなった。 30代と思った年齢は少しだけ若く、 「まだ27だよ」 とふわりと笑った。 いるだけで、まるでひとくちの紅茶のように心が丸くなる、という印象の人だった。 そのとき私は、 あぁこの人は、月に必要な人だ、 と実感した。 彼がいるから、月はここにいるんだろう。