私の前には月が立っていた。 ウエイターらしい服装は、月の容姿をより一層引き立たせていた。 白と黒のコントラストの中、唯一の色彩である青っぽい瞳は少し揺れている。 中途半端な時間だからだろうか。 お客のいない店内はひっそりと静まり返っていて、私はいたたまれない気分になった。 無言の月に、迷惑だったかなと心配になる。 静けさを破り、月が言った。 「……こちらへどうぞ」