少し古びた建物も、少しすすけた看板も、全てが私に主張しているような気がする。 喫茶店『セレネ』 ドアには『OPEN』の文字がぶら下がっている。 私は、吸い込まれるようにドアに手をかけた。 カランカラン…… 澄んだ鐘の音が、お店いっぱいに広がった。 「いらっしゃいませ」 穏やかな深い声が聞こえた。